天使

何年も前の春の終り

代々木の駅前で天使を見た

みんなそんな風に想像しないと思うけど

天使はおじさんだった

さえないおじさんだった

５０代半ばくらいの サラリーマン風だった

風が吹いていた

天気はまぁまぁ良かった

ぼくはちょっと泣いてしまった

なんでその人が天使だってわかったかっていうと

背広のすそからそっと 羽根の先っちょがのぞいてたから

誰もそんな風に考えたりしないと思うけど

天使はおじさんだった

どうでもいいおじさんだった

うだつのあがらなそうな サラリーマン風だった

風が吹いていた 天気はまぁまぁ良かった

ぼくはちょっと泣いてしまった

それから３年たって 新宿東口だった

信号の向こう彼を見た

ぼくは急いで追いかけた

だけど天使は雑踏に消えた