はじまりのうた

はじめてこの部屋でコーヒーを淹れた 15日めの朝

 トースト焼いて レモンバター塗って ３回めの月曜日の朝

 そのあとは とっておきのチョコレートを一粒

 おいしものは 1人で食べても おいしくて安心した

 なにかを 終えなきゃ 始められない

 不器用さと ちゃんと向き合って さみしさだって抱きしめた

 テレビつけたのはまだ 元号変わる瞬間だけ

 はじめてこの部屋で 迎える1日 差し込む窓の光

 あの日感じた心細さを わたしはよく知っていた

 たまには左手を犠牲にしながら たくさんの恋をした

 デニムのシューズも 真っ赤なスーツケースも ぼろぼろなのに捨てなかった

 なにかを 終えなきゃ 始められない

 不器用さと うまく付き合って たくさんたくさんまわり道

 振り出しに戻ることもある

 1人でなんて生きていけないのに 可愛く甘えられずに

 大事な人への感謝の気持ちは いつも「ごめんね」が先に出る

 愛されること 恐れちゃいけない

 張り詰めた顔 今すぐやめて 泣きながらでも笑おう

 やさしさにであうたび 抱き合える