桜前線

花開くことを待ち望む

蕾に打ち付ける長い雨が降りました

傘で隠れた清らかな顔を見せない

だけどあたたかくてやさしい雨でした

心へ滴りました

花開け

雲がおひさまを隠して

希望の筋を失う

ずっとずっと涙落としながら

ついに時は来た馨しい香りと共に

春一番過ぎて大地を撫でました

漸く顔を上げたわたしたちの最初の試練

だけどあたたかくてやさしい風でした

春が告げられました

花乱れ

また美しさを憂いて

数えた皺を嘆く

ずっとずっと時間を砕きながら

私はしわくちゃで見るに堪えない姿

色褪せた花びらが宙に舞いました

ふけていく合間にどんどん時間は過ぎた

だけどあたたかくて刹那の夢でした

私たちは雨になりました

桜吹雪け

散って散って散って散って散って散って

青葉へ繋ぐ夏が始まる

青く遠く澄んだ空が咲く

軈て青葉も土に還る頃待って

すべてあなたにまた会うためにしたこと

次の春まで

また雪解けの季節まで

あなたを待つ