インクライン

キリンビバレッジの深夜の工場で

働く隣りの人と

朝すれ違って

青ざめた顔で一千万の

損失を出すミスをしたんだと

諦めた笑い顔と草臥れた作業ズボン

ガチャリと閉ざされたドアの向こう側で

大きく笑う子供の声

まつ毛を濡らす薬缶の湯気

明日を憂う時計の音

絡まり渦巻く洗濯もの

窓を叩く冷たい風

電気代値上がりのお知らせ

遠くに響くサイレンの音

果てなく影を伸ばす電波塔

またいつものベッドタウントゥモロウ

錆び付いたフェンスの真昼の河川敷で

歩くおばさんの影が

赤ちゃんをおぶって

静かに微笑んで

揺れる黒い川を観てた

風に揺れるキリン草

吹き上げる入道雲

引き込まれ立ち尽くす僕の目の前で

傾いてく時の流れ

砂埃上げるダンプの群れ

溶けるアスファルト

滲む陽炎

胸を突き刺す青空の青

朽ち果て行く街の景色

人知れず生まれ消える命

風になびく洗濯もの

さよならと手をかざす電波塔

またいつものベッドタウントゥモロウ