歌詞
ギリギリ間に合った終電
すぐ隣に座る若者のヘッドフォンからの音漏れがすごく
「まじか よりによって三日間の入口で...」
目を閉じ 一呼吸置いてから 切り出す
「ちょっと音下げてもらっていいですか?」
逆ギレも覚悟していたが
その若者は泣きそうな顔でヘッドフォンをリュックにしまい
電車の中には さっきの音漏れ以上に大きな静寂が
ずっと鳴り響いていた
タオルで場所取りをしたまま
サウナ室を出て行こうとしたおっちゃん
「このタオル持って行ってもらっていいですか?」
「ええねん 置いとって」
さすがの"言うdays"でも それ以上
言葉を重ねることはできず
ただおっちゃんはなぜかうれしそうな顔をしており
状況は何一つ解決していないが
さっきまで 口にせずともみんなから発せられていた不満の気配が
サウナ室の中から うすらいでいた
誰かがガレージんとこで飼ってる亀
その亀をじーっと見つめているおばあちゃん
俺はここをよー通るから見慣れたもんやけど
きっとこのおばあちゃんにはもの珍しく映ったのだろう
「めっちゃ亀ですね」 思ったまま口にすると
俺の知らんかった三匹の名前を教えてくれ
うち一匹が元気がないと心配していた
その時 おばあちゃんがかけている眼鏡のフレームが
赤であることに気付いた
チョコを一粒食べては座席で拭く
一粒食べては拭く を延々繰り返してる男の子
こういう時 親と子供
どちらに向かって注意する方がフェアなんやろうか?
子供に伝えるのは意気地がないように思え
かと言って 親の口から"自分の考え"を伝えるよう促すのも違う気がし
なんて考えていたら バスは停まり 親子は降りていく
茶色く汚れたシートをティッシュで拭いた
「レス遅すぎでしょ!」 Zoomミーティングで開口一番そう伝える
どこから“遅い”とされる線引きかはそれぞれだが
どの線引きでも遅いと言える“遅さ”に思えたから
頭ごなしにそうぶつけた
一気に空気は固くなり 話も全く弾まん
この空気俺のせいか? レスの遅さが原因やろ?
ただ ミーティングが終わり 部屋を包んだ静寂は
いつかの電車の静寂とよく似ていた
駐車場の出口で駐車券が見つからず
一気に変な汗が吹き出る
探している間にも どんどん後ろの列が長くなる
が、どの車もクラクションを鳴らさない
その無音は 「ゆっくり探していいよ」
「あるある」と言ってくれているように優しく届く
やっと見つかり 駐車場を出る時
ハザードに伸ばしかけた手で 窓を開け
思いっきり言葉で伝えた 「ありがとう」
ごみ出しに行くと もうすでに回収されており
ゴミステーションはもぬけの殻
そこに近づいてくる知らんおっちゃん
(なんやねん ちゃんと持って帰るって)
文句を言われたら 言い返してやろうと身構える
するとおっちゃんは 「兄ちゃん 2分 2分前に来たんよ
惜しかったなー 2分!」と笑った
その時 タオルを置いたままにしていたおっちゃんが
微笑んでいた理由が少し分かった気がした
Written by: 神門