だれもいないニライカナイ

朝もやがかかる住宅

まだみんなねむる週末

電線がたゆむ重力

小鳥がさえずり 羽ばたく

誰にも気づかれないように

出かける支度をしたんだ

裸足のまま 抜ける通りは

もぬけの殻 そんな空気感

鍾乳洞のショーウィンドウ

改札ぬけたらオホーツク

君を待つ ニライカナイ

ひとりぼっち きらいじゃない

幽霊たちの桃源郷

終わらない春だね ホーホケキョ

いってみたいな ユカタン半島

君と一緒にデカダン 今夜も

夜のなかでうずくまってた

それを僕はしらんぷり

だからわたし いないふり

星をかぞえ まださまよってた

もうここにはいられないのかもしれない

海水まじわる淡水

鱗がはがれるワンシーン

街は沈んだ 海底に

鯨が歌うよ 弔い

キャンディの包み紙 捨てた

あの子供はいまもまだここにいる

誰もいなくなったこの地で

からっぽになった家を見つめる

池塘春草の夢

寂しがりやのモウセンゴケ

ともだちはアンモナイト

みかえりはなんもないの

海中洞窟 探検家

流氷の上でけんけんぱ

足下を照らすネオン

ひかるグリーンペペ

もういいかい もういいよ

まだ遊びたりないの

もうすこし ねぇあとすこし

帰る場所がないの

あとふたり あとひとり

だんだんといなくなって

もうひとり もうふたり

わたしがはぐれていった

森のなかでねむっていたの

苔が体を蝕み

土が優しくかぶさり

かくれんぼはおわっていたの

息をひそめて見送る

鬼はとっくに遠くへ

いつになればたどり着くんだろ

みんなどこにいったの

ひとはどこへ向かうの

呼んでみても返事はなくて

声は 夜にまだ置き去りのままで