grau

駄目になってしまったんだ

きっと何もかも

ループする心臓の音量が

跳ね上がる

「ねえ、僕の事憶えている？」

「ねえ、いつかまた笑ってくれる？」

手を伸ばす。

色彩は透明だった

きっともう死んでいる

ループする心臓の音を

ただ聞いていたかっただけ

影は何重も過ぎていく

微熱を帯びて一層光って

世界は今日も蠢く

普遍を見せかけて

そこに僕が入れる程の水辺は無くて

右も左もわからない位に

ただ痛かった

「ねえ、僕の事憶えている？」

「ねえ、いつかまた笑ってくれる？」

「ねえ、君を追いかけた夏に

取り残されたままさ。」

手を伸ばした。