風のアネモネーアフロディーテの想いー

運命の矢が 女神の胸を射て

あなたに出会った 風薫る丘

その微笑みに 世界は色を持ち

永遠さえも 短いと感じた

けれどあなたは 狩人の子

その瞳はいつも 森の奥を見ている

行かないで 私の声が聞こえるなら

あなたの無邪気な強さは あまりに脆くて危ういから

この腕に閉じ込めてしまえたら…

不吉な風が 二人の頬を撫でた

「恐れるものか」と あなたは笑うけど

天上の誰かが 嫉妬に燃えている

槍を手に取る 凛々しい後ろ姿が

なぜか小さく 滲んで見えた

森の静寂を破る 悲痛な叫び

駆けつけた大地は 赤く染まり

神の力でさえ もう時を戻せない

あなたの亡骸(なきがら) 抱きしめ崩れた

さようなら 愛しい私の人よ

流した涙と血汐(ちしお)から 生まれた花が揺れている

その名はアネモネ あなたの化身(けしん)

はかなく美しい 約束の花

春が過ぎ 風に散っても

また次の年も あなたは咲く

ここでずっと あなたを待っている…