歌词
[Verse 1]
小生が生まれたのは遠い雪国の寒い日
吐く息も白く染まる 冬の夜(よ)の帳に
捨て子だった小生を拾ったのは
歩く事さえ覚束ないとある老夫婦だった
[Verse 2]
けして裕福とは言えない暮らしの中で
ささやかでも確かな愛を受け育った
お爺さんの話はいつもデタラメで
可笑しくて小生はそれが大好きだった
[Verse 3]
あの冬の夜から丁度十年の日
二人は「欲しい物を一つ上げよう」と言ってくれたんだ
華やかに輝く 街角のショーケースに
子供の目を惹くオモチャなんていくらでもあった
[Verse 4]
プレゼントを探す痩せ細った老夫婦に
小生はやりきれない程の感謝を抱いた
「欲しい物なんてない」
それは小生が初めてついた嘘だった
[Verse 5]
悲劇のヒーロー
嘘つきのシナリオライアー
デタラメなストーリー
[Verse 6]
やがて学生にでもなれば働くには十分で
朝から晩汗を流し生活を支えた
それでも学校へ行けとお爺さんは
飽くことなく小生を言い励ました
[Verse 7]
学校生活は孤独との戦いさ
貰い子への風あたりは強く容赦無い
小生はいつしか 心を閉ざすように
誰とも話さず 闇の中の日々を過ごした
[Verse 8]
そんなある日 思いがけぬ光を見たんだ
独りにも慣れた あの教室の片隅で
とある青年が小生に話しかけて来たのだ
彼はただ一言「友達になろう」と
[Verse 9]
こんな嫌われ者に何の用があるのか?
こんな捻くれ者に何の得があるのか?
「友達なんていらない」
それは小生が二度目についた嘘だった
[Verse 10]
悲劇のヒーロー
嘘つきのシナリオライアー
デタラメなストーリー
[Verse 11]
青年が病に倒れたのはそれから数日後
理不尽にもよく晴れた夏の日だった
駆けつけた頃には青年は目を覚まして
小生の訪れに驚き 嬉しそうに笑った
[Verse 12]
長い闘病になるらしい
それでも小生はあの日くれた光のお返しだと
翌る日も翌る日も ただ一人だけの掛け替えのない友の傍らに寄り添った
[Verse 13]
そして寝たきりの青年を楽しませようと
作り話を沢山書いて話したんだ
あの時君が笑っていたのはきっと
小生の話があまりにもデタラメだったからなんだね
[Verse 14]
今でもずっとデタラメを集める終わりなき旅の途中さ
君が笑ってくれるなら
小生は何度だって嘘をつこう
[Verse 15]
悲劇のヒーロー
嘘つきのシナリオライアー
デタラメなストーリー
Written by: 森心言